星空の下で






「ねぇ、蛮ちゃん、いっぱいの星って見たことある?」

信号待ちのスバルの中で、銀次が突然言いだした。

「星だぁ?なんでまた急に?」

蛮が銀次の方をちらっと見ると、
銀次の目線の先にはプラネタリウムのポスターが貼ってあった。


―ああ…それでか

プラネタリウム=いっぱいの星。 
蛮は銀次のこんな単純さも好きだった。


「無限城では、星、見えなかったのか?」
「ううん、見えたよ…でもちょっとだけ」

「見たい…のか?」
「そりゃーね…でもこんな街中じゃ無理だよね」

銀次が残念そうに微笑む。
そんな顔されたら、つい叶えてあげてしまいたくなる。
蛮はフッと笑うと言った。


「久しぶりに…するか?デート」
「ほえ?」

突然デートに誘われた銀次。
アホみたいな返事になってしまった。
蛮はハンドルを左に切った。
そしてどんどん裏新宿から遠ざかっていく。


「ねぇねぇ、蛮ちゃん。オレ、さっきのプラネタ…なんとかでもいいよ?」
「この際せっかくだ!本物の満天の星、見せてやるよ」
「ホント!? うわ〜いv」

銀次がスバルの中で手をあげて喜ぶ。

「アホッ!こん中狭いんだから、喜ぶならもっと静かに喜べ!!」

は〜い。と言って静かになる。
…が、溢れんばかりの笑みが銀次からこぼれている。
―可愛いヤツ
蛮はフッと笑うと銀次の髪をくしゃくしゃっとした。
そして1時間後、スバルはある海岸に着いた―




季節外れの海岸は、辺りには人気が無く、2人きりだった。
わ〜いvvと言って、銀次は海に向かって走り出した。
蛮はポケットに手を突っ込んだまま、呟いた。


「銀次、寝そべってみな?」
「…うん」

言われるまま銀次は、後ろに体重を移動する。
すると―


「わ〜っ!!!」

空一面には満天の星空。
銀次はあまりの星空の綺麗さに、思わず言葉を失った。


「どーだ?キレーだろ?」

蛮も寝そべっている銀次の横に腰を下ろした。

「うん…うん!うん!すごくキレイv」

銀次も起きあがり、蛮と同じ目線の高さになる。

「ほんと〜にキレイだねv蛮ちゃんv」

銀次は微笑みを保ったまま、蛮の方を見る。
その銀次の瞳に星空が反射する。


「オマエの方が綺麗だよ」

なんてコト、絶対に言わない。
言いたくても言えない性格なのだ。
その代わりに不意打ちで銀次にキスをする。


「な、なに?どうしたの蛮ちゃん???」

突然の蛮からのキスに焦る銀次だが、どこか嬉しそうだった。

「いや…オマエがあまりにもマヌケヅラしてたから」
「もぉ〜!!何それ!!」

銀次がぷうっと頬を膨らませる。 
―が、すぐ吹き出した。


「蛮ちゃん、キスする時はするって言ってよね!こっちだってムードってもんが…」
「むーどぉ?オマエにか?」
「そうだよ!そうだなぁ…例えば、目をつむって待ってるとかさv」

―これはどのマンガから覚えたのだろう?
蛮はプッと吹き出すと、な〜に言ってンだ。
と言って銀次にデコピンした。


「じゃ、言ってやる…するぞ」
「うんv」

瞳を静かに閉じる銀次。
そして蛮が銀次に改めてキスをする。
唇が触れるだけの優しいキス。
でもお互いの気持ちが流れ込んでくる、
温かい気持ちになるキス。
そのあともしばらく2人は、星空の下で見つめ合っていた。


「ワリイな、銀次。今日はいつも俺が金、使っちまう代わりに
何かプレゼントと思ったんだが、これがいっぱいいっぱいだ」

「ううん、そんなコトないよ!オレ、すっごく嬉しかったよv
ありがとう蛮ちゃん…ホントにありがとv」


銀次が満面の笑みで蛮に抱きつく。
蛮はそんな銀次の髪をくしゃくしゃっとする。


― ねぇ、蛮ちゃん
オレね、蛮ちゃんがそばにいてくれればいい
それだけでオレは、オレはサイコーに幸せv
それだけでサイコーのプレゼントだよ…蛮ちゃんv








〜The End〜





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このSSはHIZKIさんと相互リンク記念で貰って頂いたSSなのですが、
この度サイト閉鎖されたので出戻りました。
…んがっ!痛い…痛い痛い…痛すぎるっ!
何なのこの酷さはっ!
いくら初期の作品とは言え、酷さになんか吐きそうです…(-_-;)
こんな痛いヘタレ作品を飾っていてくれたなんて、
有り難う、HIZKI。そしてごめんなさい…(苦笑)